2019/01/26

薬物依存の基礎知識|「耐性」「精神依存」「身体依存」

皆さんは、「耐性」「精神依存」「身体依存」という3つの言葉をご存知でしょうか?

これらはアルコール依存症や薬物依存症などを説明する際によく使用される言葉です。

そのため、「耐性」「精神依存」「身体依存」を知ることで、より上記のような依存症を理解しやすくなると言われています。

イメージで語られがちな「依存症」と「当事者」

今回は上記3つの言葉を学びながら、一緒に「依存症」の理解を深めていきましょう。

この記事では「薬物依存症」を中心にお伝えしていきます。

アルコール依存症から「耐性」「精神依存」「身体依存」をお話した記事は こちらからご覧ください。

目次

1.薬物依存症とは

まず薬物依存症とはどういうものなのか、一緒に見ていきましょう。

薬物依存症は、大麻や覚醒剤などの薬物を繰り返し使用することで、それがないと落ち着かない身体になり、結果何度も手を出してしまう病気です。

最初は「一回だけなら大丈夫だろう」という軽い気持ちで始めても、気づいた時には「やめられなくなっていた」という状態になってしまうところに薬物の恐ろしさがあります。

近年では、「処方薬依存症」と呼ばれる市販の鎮痛剤や精神安定薬などの多量摂取、もしくは間違った処方で依存症になってしまうケースも報告されています。

処方薬依存症は若者や主婦の間にも広がり始めており、決して遠い世界の話ではありません。

法務省が発表した「平成28年版犯罪白書」では、覚醒剤事件の再犯率が近年上昇傾向にあるとされています。

薬物依存の問題は社会全体で考えるべき課題なのです。

2.「精神依存」「身体依存」「耐性」

「精神依存」「身体依存」そして「耐性」という言葉は、「依存症者の状態」を説明する際に使用されています。

薬物依存症に関しては、様々な視点から説明していくことが可能ですが、中でも依存状態で見られる特徴や傾向を押さえておくことは大切です。

当事者たちが今どのような状況にあり、今後どのような行動をとり得るのかを知ることで、適切な対応はもちろん、落ち着いて問題を考えることが可能になります。

それではまず、3つのキーワードの関係性を説明します。

まず薬物を繰り返し使用すると、徐々にその効果が薄くなっていきます。

この状態が「耐性」です。

そこからさらに反復使用を繰り返すと「精神依存」と呼ばれる状態になります。

具体的には「薬物がほしくてほしくてたまらず、その欲望が抑えきれなくなった状態」を言います。

そして、薬物によっては「身体依存」といい依存対象を摂取しないことによる離脱症状を避けるために、「薬物探索行動」をするなどのサイクルに入ります。

それぞれのキーワードについて具体的に見ていきましょう。

2-1.薬物依存症の症状|耐性

「耐性」とは、薬物を継続的に乱用することで次第にその効果が薄れ、1回の使用では最初と同じような効果が感じられなくなってしまう現象のことを指します。

おそらく多くの方が、似た状況を風邪薬などで経験しているかもしれません。

そのため、「身体依存」には必ず耐性を伴いますが、耐性を生じる薬物がすべて依存を形成するわけではありません。

薬物の耐性がついた人の中には、これまでと同様の効果を期待し、さらに多くの薬物を体内に入れようとします。

これが繰り返されると次の段階の「精神依存」に進みます。

2-2. 薬物依存症の症状|精神依存

「精神依存」は、脳が薬物を求めそれを自分でコントロールできない状態を指す言葉です。

精神依存だけでは、その薬物が切れても、身体の不調は原則ありません。

しかし、たとえ一回の薬物使用であれ、それは脳の変容をもたらします。

一度精神依存状態になると脳が薬物を渇望するため、たとえ家族が説得を試みても、また依存症の当人がやめようと決意しても薬物依存の克服は困難です。

薬物の乱用を続けていると、恐らくほぼ全ての人に見られる現象が、「薬物探索行動」です。

本人がやめたいと思っていても、気づいたら家族に隠れて薬物を手に入れていたという話は数え切れません。

時に「薬物探索行動」が要因で犯罪に巻き込まれることや法を犯してしまう可能性もあります。

現段階で、脳の状態を元に戻す方法、あるいは渇望を治療する薬などは見つかっていません。

薬物依存症から回復するためには、これまでの生活や環境を見直し、薬物をなるべく想起させない習慣を形成することが最良の手段だと言われています。

2-3. 薬物依存症の症状|身体依存

薬物の種類や状況によっては、精神依存だけでなく「身体依存」という状態に入ります。

身体依存になると、薬物を中断することで様々な異常症状が現れます。

例えば、不眠や幻覚、妄想異常な発汗などです。

ニコチンや覚醒剤は強い精神依存を引き起こしますが、身体依存はありません。

一方でヘロイン等あへん系麻薬は身体依存も引き起こすとされています。

また、身体依存の際にも薬物探索行動は見られます。

以下の図は、代表的な薬物の各特性についてまとめたものです。

身体依存からの回復のためには、精神依存と同様、継続的な治療プログラムの実施、そして薬物を生活の中から排除することが重要です。

治療プログラムに関しては、以下の記事でもお話しています。

3.まとめ

今回は、薬物依存のプロセスとその中で見られる状態や行動についてお伝えしていきました。

改めて内容を整理します。

  • ①薬物依存症は耐性→精神依存→身体依存の流れで一般的に進行することが大切。
  • ②薬物によっては精神依存で留まるケースがある。
  • ③精神依存であれ身体依存であれ、継続的な治療が回復のカギ。

薬物依存症に関して、他の記事でもお話しております。そちらも併せてご覧頂けると幸いです。

私たちの施設では、薬物依存性の回復から就労支援まで、一貫したサポートを提供しています。

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参考:

知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス 総合サイト|厚生労働省

ご家族の薬物問題でお困りの方へ|厚生労働省

薬物依存の形成過程 公益財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センター

・和田清『薬物依存の脳内メカニズム』(2010)講談社

鈴木勉 依存性薬物の行動精神薬理学(2003)日本薬理学会

ライター名: ブランコ先生